大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台地方裁判所 昭和44年(わ)130号 判決 1969年7月23日

本店所在地

宮城県石巻市川口町三丁目二番一号

有限会社

みのり化成

右代表者代表取締役

加納芳雄

本籍

宮城県石巻市明神町一丁目一番地の三

住居

同県同市同町一丁目二番六一号

会社役員

相原健三

大正九年一一月一五日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官武内喜代出席して審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人会社を罰金三五〇万円に

被告人相原健三を懲役六月に

各処する。

但し被告人相原健三に対して、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人会社は肩書地に本店事務所および工場を設け、フイシユ・ソリユブル飼料の製造および販売等を営業目的として昭和三九年八月二六日設立された資本金一〇〇万円の有限会社であり、被告人相原健三は被告人会社の親会社であるみのり飼料株式会社の代表取締役で被告人会社の実質的主宰者として同社の業務一切を統括し右設立当初から同社の監査役となつているものであるが、被告人相原健三は被告人会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、製品売上げの一部および副産物売上げの全部を公表帳簿に計上しないで除外したり、魚類等の原材料の仕入を架空計上して、これによつて得た資金を架空名義の簿外銀行預金等による蓄積、関係各会社に対する出資金および簿外経費の支払いに充てる等不正な方法によつて被告人会社の所得を秘匿したうえ、

第一、昭和四〇年七月一日から同四一年六月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額が二、四七三万九、四七一円で、これに対する法人税額が八七一万一、〇〇〇円であつたのに拘らず、右法人税の確定申告期限である同四一年八月三一日までに所轄石巻税務署長に対して法人税確定申告書を提出せず、もつて被告人会社の右事業年度の法人税額八七一万一、〇〇〇円を逋脱し

第二、昭和四一年七月一日から同四二年六月三〇日までの事業年度において、被告人会社の実際所得金額が、一、四三八万九、九七四円で、これに対する法人税額が四八二万六、一〇〇円であつたのに拘らず、右法人税の確定申告期限である同四二年八月三一日までに所轄石巻税務署長に対して法人税確定申告書を提出せず、もつて被告人会社の右事業年度の法人税額四八二万六、一〇〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人相原健三の当公判における供述、検察官に対する供述調書(二通)および大蔵事務官の同被告人に対する昭和四三年八月二一日付、同月二二日付(第一、二回)、同月二三日付、同月二四日付、同月二八日付、同月三〇日付同四四年二月六日付(第二回)、同月七日付(第二ないし第五回)、同月一〇日付、同月一二日付、同月一四日付(第一、二回)、同月一七日付(第二、第四ないし第六回)、同月一八日付、同月二二日付各質問てん末書ならびに同被告人作成の同月一七日付、同月一八日付(第一、三回)各上申書

一、加納芳雄の検察官に対する供述調書および大蔵事務官の同人に対する昭和四三年八月二二日付、同四四年二月一三日付各質問てん末書

一、志摩秀弥の検察官に対する供述調書(二通)および大蔵事務官の同人に対する昭和四三年八月二一日付(第一、二回)同月二三日付、同月二四日付、同月二六日付(第二回)、同月二八日付、同四四年二月一五日付、同月一六日付、同月一八日付(第一、二回)、同月二〇日付(第一ないし第四回)、同月二一日付各質問てん末末書

一、千葉種助の検察官に対する供述調書および大蔵事務官の同人に同する昭和四三年八月二二日付、同年一一月一三日付、同四四年二月五日付、同月一三日付(第一ないし第三回)各質問てん末書

一、大蔵事務官の後藤庄三郎(昭和四四年二月四日付を除く六通)、高橋美喜雄(六通)、木村定吉(三通)、平田喜蔵、中川秀伍、及川孝、佐々木元、佐々木一男、木村享、遠藤昌孝、阿部駿芳、高橋秀男、松本理、佐藤忠三、神原昌平に対する各質問てん末書

一、高橋美喜雄(二通)、菅井正太郎(二通)、大橋亀雄、早水猛雄、高橋宏和、大山三郎、和泉勉、玉手竜臣、酒見則正、木村定吉作成の各上申書

一、菊地盛、最上清隆各作成の「取引内容の回答について」と題する書面

一、沢口勝弥(第一)、佐藤栄吉作成の各検査てん末書

一、池田栄一作成の「簿外借入金および支払利息調査表」、「簿外預金等調査書および簿外預金等の受取利息調査書」および「銀行調査書」

一、松本理作成の「回答書」

一、登記官吏作成被告人会社の登記簿謄本

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官の被告人相原健三に対する昭和四三年一〇月二二日付(第一回)、同四四年二月七日付(第二回)、同月一七日付(第三回)各質問てん末書および同被告人作成の同月二二日付上申書

一、大蔵事務官の志摩秀弥(昭和四三年八月二六日付(第一回)同四四年一月一八日付(第一回)、同年二月一〇日付(第三回)の三通)、後藤圧三郎(昭和四四年二月四日付)、大沢広、大山三郎、四ツ柳正寿、江尻平に対する各質問てん末書

一、遠藤昌孝(二通)、佐々木一男、近江谷貞実、四ツ柳正寿、志摩秀弥(第一)作成の各上申書

一、佐藤栄吉作成の「末納書薬税額計算書」(昭和四〇年七月一日から同四一年六月三〇日までのもの)

一、阿部真一作成の「脱税額計算書」(昭和四〇年七月一日から同四一年六月三〇までのもの)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官の被告人相原健三に対する昭和四三年一〇月二二日付(第二、三回)、同四四年二月一七日付(第一、二回)各質問てん末書および同被告人作成の同年二月一八日付(第二回)、同月二二日付(第二回)各上申書

一、大蔵事務官の志摩秀弥(昭和四四年一月一八日付(第二回)同年二月一〇日付(第一、二回)、同月二〇日付(第五回)の四通)、三都井外治(二通)、加納芳雄(昭和四三年一〇月二五日付)に対する各質問てん末書

一、萩原雄治、庄司栄一郎、鹿島五郎、佐藤宣夫、志摩秀弥(第二)作成の各答申書

一、菅原吉雄、守健二作成の各「取引内容の回答について」と題する書面

一、沢口勝弥作成の検査てん末書(第二)

一、池田栄一作成の「役員貸付金調査書)

一、佐藤栄吉作成の「未納税額計算書」(昭和四一年七月一日から同四二年六月三〇日までのもの)

一、阿部真一作成の「脱税額計算書」(昭和四一年七月一日から同四二年六月三〇日までのもの)

(法令の適用)

被告人相原健三の判示各所為はいずれも法人税法一五九条、七四条一項に該当するので所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、その刑期の範囲内で被告人相原健三を懲役六月に処し、また右各所為は被告人相原健三が被告人会社の従業者としてその業務に関してなしたものであるから、被告人会社に対しいずれも法人税法一六四条一項、一五九条、七四条一項を適用して処断すべきところ、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金三五〇万円に処し、被告人相原健三については素直に脱税の事実を認めて本件捜査に協力的態度をとり、かつ逋脱税額等を完納する等改悛の情顕著であると認められるので、刑法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 佐々木次雄 裁判官 原健三郎 裁判官 板垣範之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例